認知症はよくなるの?治療の考え方と家族が知っておきたいこと

親の物忘れが増えてきたとき、多くの家族が真っ先に気にするのが「認知症だったら、もう治らないのだろうか」ということではないでしょうか。インターネットで調べるほど不安が大きくなり、受診をためらってしまう方もいるかもしれません。

実は、ひと口に認知症といっても原因はさまざまで、その後の経過も一人ひとり異なります。治療によって症状がやわらぐケースもあれば、進行をゆるやかにすることを目指しながら、暮らしを支えていくケースもあります。

この記事では、「認知症はよくなるのか」という疑問について、治療とケアの基本的な考え方を整理し、家族ができることをまとめます。具体的な診断や治療については、必ず医師に相談してください。

「治る・治らない」は原因によって変わる

元の状態に戻すのが難しいタイプ

アルツハイマー型認知症をはじめとする多くの認知症は、脳の神経細胞が少しずつ変化していくことで起こるとされています。現在の医療では、こうしたタイプの認知症を根本から治して、発症前の状態に戻すことは難しいと考えられています。

ただし、「治らない」ことは「何もできない」ことを意味するわけではありません。症状の進み方をゆるやかにすることを目指した治療や、本人が安心して暮らせるための工夫によって、その人らしい生活を続けていくことは十分に考えられます。

治療によって改善が期待できる場合もある

一方で、物忘れや判断力の低下といった認知症に似た症状が、別の原因で起きていることもあります。たとえば、服用している薬の影響や、甲状腺の病気、栄養の不足、脳の病気(正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など)が関係している場合です。また、うつ状態や、体調の急な変化によって一時的に意識が混乱する「せん妄」が、認知症と見分けにくいこともあるといわれています。

こうしたケースでは、原因となっている病気の治療や薬の見直しによって、症状の改善が期待できることがあります。「年のせいだろう」と家族だけで判断せず、まず原因を確かめることが何より大切です。

治療とケアを支える3つの柱

医師と相談しながら進める薬物療法

認知症の種類や症状によっては、認知機能の低下をゆるやかにすることなどを目的とした薬が処方される場合があります。ただし、使える薬やその効果は、認知症のタイプや本人の体の状態によって異なります。副作用が出ることもあるため、服用中に気になる変化があれば、自己判断で中止したり増やしたりせず、主治医に伝えるようにしましょう。

毎日の暮らしを整える

決まった時間に起きて食事をとる、夜はしっかり眠る、体を適度に動かす、人と会って話をする。こうした規則正しい生活は、心身の調子を保つうえで大切だと考えられています。住み慣れた環境で、本人が落ち着いて過ごせるよう、部屋の明るさや物の置き場所を工夫することも、生活の質を保つことにつながります。

本人の気持ちに寄り添った接し方

認知症の方は、記憶があいまいになることで不安や戸惑いを抱えやすくなります。間違いを繰り返し正したり、動作を急かしたりすると、混乱や不安がかえって強まってしまうこともあります。否定するよりも、まず本人の気持ちを受け止めることを心がけましょう。また、料理や洗濯、趣味など、本人ができることは役割として続けてもらうことも大切です。

気になる変化があれば、早めに相談を

認知症のはじまりは、「少し忘れっぽくなったかな」という程度の変化であることも多く、家族もつい様子を見てしまいがちです。けれども、同じことを何度も聞く、約束を忘れることが増えた、買い物や料理の段取りがうまくいかなくなったなど、変化が続いていたり生活に支障が出ていたりする場合は、一度受診してみることをおすすめします。

早めに原因を調べておけば、治療によって改善が見込めるケースを見逃さずに済みます。また、認知症と診断された場合でも、今後の治療方針や生活の準備について、本人の意思を確かめながら考える時間を持ちやすくなります。

受診先に迷ったときは、まずかかりつけ医に相談してみましょう。もの忘れ外来などの専門の診療科を紹介してもらえることもあります。地域包括支援センターでも、医療機関の情報や介護サービスについて相談に乗ってもらえます。本人が受診を嫌がる場合は、「健康診断のついでに」など、負担に感じにくい誘い方を工夫してみるのもひとつの方法です。

家族からよく聞かれる疑問

薬を飲み続ければ、元どおりになりますか?

薬の効き方は、認知症のタイプや本人の状態によって大きく異なります。服用すれば必ず元の状態に戻る、というものではありません。期待できることや注意点について主治医から説明を受け、本人に合った治療を一緒に考えていきましょう。

認知症と診断されたら、施設への入居を考えたほうがよいですか?

認知症と診断されたからといって、すぐに施設へ移らなければならないわけではありません。訪問介護やデイサービスなどを利用しながら、自宅で暮らし続けている方も多くいます。ただ、見守りが難しくなってきた、家族の負担が大きくなってきたと感じたときは、高齢者向けの施設も選択肢として検討してみるとよいでしょう。

まとめ

認知症が「よくなるかどうか」は、その原因によって大きく変わります。根本的に治すことが難しいタイプもありますが、薬の影響や別の病気が原因であれば、治療によって改善が期待できる場合もあります。だからこそ、気になる変化に気づいたら、早めに医療機関で原因を確かめることが大切です。

診断を受けたあとも、薬による治療、暮らしの工夫、本人に寄り添った接し方を組み合わせることで、その人らしい生活を支えていくことができます。家族だけで抱え込まず、かかりつけ医や地域包括支援センター、ケアマネジャーなど専門職の力も借りて、状態の変化に応じた支え方を考えていきましょう。