親が夜に眠れない・昼夜逆転してしまうときの原因と家庭での工夫

夜中に何度もトイレに起きる、明け方まで眠らずに家の中を歩き回る、昼間はうとうとしているのに夜になると目がさえてしまう。高齢の親の睡眠をめぐる悩みは、介護をしている家族からよく聞かれるもののひとつです。

眠れない夜が続くと、本人の体力が落ちたり日中の活動が減ったりするだけでなく、付き添う家族の睡眠も削られていきます。認知症のある方の場合は、夜間の不眠が転倒や、ひとりで外へ出てしまう行動につながることもあり、早めに手を打っておきたい問題です。

この記事では、高齢者が夜に眠れなくなる主な背景を整理し、家庭で取り組みやすい工夫と、介護する家族が無理を重ねないための考え方をまとめます。

眠れない原因はひとつとは限らない

高齢者の不眠には、いくつかの要因が重なっていることが少なくありません。対策を考える前に、どんな背景がありそうか見当をつけておくと、打つ手が選びやすくなります。

年齢とともに眠りが浅くなる

年を重ねると、若い頃のようにまとまった時間ぐっすり眠ることは難しくなっていきます。夜中にふと目が覚める、予定より早く目覚めてしまう、わずかな物音で起きてしまうといった変化は、加齢にともなって自然に起こるものです。ある程度は避けられない面もありますが、ほとんど眠れていないような極端な状態であれば、別の原因が隠れていないか考える必要があります。

日中に体を動かす機会が少ない

外出の機会が減り、体を動かす量が少なくなると、夜になっても自然な眠気が訪れにくくなります。一日の大半をテレビの前で過ごしている、横になっている時間が長い、昼寝の回数が多いといった生活が続くと、昼と夜のリズムが入れ替わってしまうこともあります。

認知症による体内時計の乱れ

認知症がある方は、体内時計のリズムが崩れやすいといわれています。夕方ごろになると不安や落ち着かなさが強まる「夕暮れ症候群(夕方症候群)」と呼ばれる状態が見られることもあり、そわそわして家から出ようとしたり、夜中に何かを始めようとしたりすることがあります。

体の不調や持病

夜間の頻尿や体の痛み、かゆみ、息苦しさなどで目が覚めてしまうこともあります。心不全や糖尿病、前立腺肥大といった病気がかかわっていることもあるため、気になる症状があれば注意が必要です。

飲んでいる薬の影響

服用中の薬の中には、眠りに影響を与えるものがあります。反対に、睡眠薬が体に合わず、日中にぼんやりして活動が減り、かえって夜に眠れなくなるということも起こり得ます。急に眠れなくなった時期と、薬が変わった時期が重なっていないか振り返ってみましょう。

昼間の過ごし方で、夜の眠りを整える

朝の光を取り入れる

朝に日の光を浴びると、体内時計がリセットされやすくなるといわれています。起きたらまずカーテンを開けて部屋を明るくし、可能であれば少しの時間でも外に出て、玄関先や庭で光を浴びる習慣をつくってみましょう。

昼寝は短めを心がける

昼寝そのものが悪いわけではありませんが、長く眠ってしまうと夜の眠気が弱まります。昼寝をするなら30分程度までを目安にし、夕方以降はなるべく横にならないよう声をかけてみるとよいでしょう。

日中に適度な活動と刺激をつくる

散歩や軽い体操、家事の手伝いなど、無理のない範囲で体を動かす時間を持つことが大切です。人と会話をしたり、趣味に取り組んだりすることも、心地よい疲れにつながります。デイサービスを利用して、日中の過ごし方にメリハリをつけるのもひとつの方法です。

夜は安心して眠れる環境を

寝室の環境を少し見直すだけでも、眠りやすさが変わることがあります。

  • 暑すぎず寒すぎない室温を保つ
  • 夜は照明を落として、部屋を暗めにする
  • テレビやラジオをつけたまま寝ないようにする
  • 夜中にトイレへ行くときに足元が見えるよう、小さな明かりを用意する
  • 本人が落ち着ける寝具や、なじみのある物を身近に置く

夜中に目を覚まして不安そうにしているときは、無理に寝かせようとするより、そばで穏やかに声をかけて安心してもらうことを優先しましょう。

医師に相談したほうがよいとき

急に眠れなくなった、夜間のトイレの回数が目立って増えた、痛みや息苦しさを訴えるといった場合は、体の病気や薬が関係している可能性も考えられます。家庭での工夫だけで様子を見続けず、かかりつけ医に相談してみましょう。睡眠の様子や、昼寝の時間、夜中に起きた回数などを簡単にメモしておくと、診察の際に状況を伝えやすくなります。睡眠薬や服用中の薬についても、自己判断で量を変えずに医師と相談することが大切です。

介護する家族の睡眠も守る

夜間の付き添いが続くと、介護する家族自身が慢性的な睡眠不足に陥ってしまいます。毎晩のように起こされる、夜中にひとりで外へ出てしまわないか心配で眠れないといった状態が長く続けば、介護疲れや体調の悪化につながりかねません。

在宅介護だけで抱え込まず、外部の力を借りることも考えてみましょう。たとえば次のような選択肢があります。

  • 短期間施設に泊まって介護を受けるショートステイ
  • 日中の活動の場にもなるデイサービス
  • 夜間の訪問に対応する介護サービス
  • 老人ホームなどへの入居

どのサービスが合うかは、本人の状態や家族の事情によって異なります。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに、夜の様子も含めて相談してみてください。

施設を考えるときに確かめたいこと

夜間の不眠や落ち着かなさが強く、施設への入居を考える場合は、認知症のある方へのケアに慣れているかどうかが大きなポイントになります。夜の見守りの体制、看護職員の配置、生活リズムを整えるための日中の過ごし方、認知症ケアの経験などは、施設によって差があります。見学の際には、夜間にどのような対応をしているのかを具体的に聞いておくと安心です。認知症ケアの経験が豊富なスタッフのもとで、夜間の様子が落ち着いていく方もいます。

まとめ

高齢者が夜に眠れなくなる背景には、加齢による眠りの変化、日中の活動不足、認知症、体の不調や薬の影響など、さまざまな要因が考えられます。まずは朝の光や昼寝の長さ、寝室の環境といった身近なところから見直し、急な変化や体の症状があればかかりつけ医に相談しましょう。

そして何より、介護する家族が限界を迎える前に、サービスや専門職の力を借りることが大切です。本人と家族の両方が休める環境を整えることが、穏やかな夜を取り戻す近道になります。