認知症の親の「同じ質問」にホワイトボードメモが役立つ理由と書き方
「今日は何曜日だった?」「誰か来るんだっけ?」。数分おきに同じことを尋ねられ、そのたびに答えているうちに、だんだん声が硬くなってしまう。認知症の親と暮らす家族からは、そんな悩みがよく聞かれます。
病気のせいだと理解していても、毎日続くやりとりは確実に心をすり減らします。そこで試してみたいのが、ホワイトボードに予定や答えを書いておく方法です。言葉で何度も説明する代わりに、文字で伝えて目で確かめてもらう。それだけで、会話の雰囲気が和らぐことがあります。
この記事では、同じ質問が繰り返される理由と、ホワイトボードを使うと何が変わるのか、書き方のコツや、それでも苦しいときの考え方を紹介します。
同じ質問が繰り返されるのはなぜ?
認知症になると、ついさっき聞いた話を覚えておくことが難しくなります。また、今日が何日なのか、この後どんな予定があるのかといった、時間に関する感覚もあいまいになりがちです。
わからないことがあると、人は落ち着かなくなります。何度も同じことを聞くのは、家族を困らせたいからではなく、「これで合っているのかな」という心細さを、言葉で確かめようとしているからだと考えられます。
つまり、繰り返しの質問を減らすには、記憶に頼らなくても答えにたどり着ける手がかりを用意してあげることが近道になります。
書いて伝えると、会話はどう変わるのか
何度でも自分で確かめられる
口で伝えた言葉はその場で消えてしまいますが、書いた文字は残り続けます。聞いた内容を忘れてしまっても、ボードを見れば本人が自分で答えを確認できます。
「さっきも言ったでしょう」を言わずに済む
同じことを聞かれたときに、「ここに書いてあるよ」と指をさすだけで返事ができます。責めるような言葉を口にせずに済むので、やりとりのとげとげしさが減っていきます。
親子のどちらも気持ちが楽になる
注意されたり、きつい口調で返されたりする回数が減れば、親の不安も和らぎます。家族にとっても、同じ説明を何度もしなければならない負担が軽くなり、気持ちに余裕が生まれやすくなります。
使い始めるときの書き方のコツ
ポイントは、たくさんの情報を一度に書き込まないことです。見たときにぱっと内容がわかる量にとどめましょう。
まずは日付と曜日、予定を一つか二つ
最初は、今日の日付と曜日、その日の主な予定だけで十分です。たとえば「〇月〇日(火) 今日はデイサービス お迎えは10時ごろ」のように、短い言葉で書いておきます。親がよく過ごす場所の、目に入りやすいところに置くと見てもらいやすくなります。
よく聞かれることは先に答えを書いておく
「今日は誰が来るの?」「お昼ごはんは何時?」「いつ帰れるの?」など、繰り返し尋ねられる質問がある場合は、その答えをあらかじめ書いておくのがおすすめです。文字は大きく、文はできるだけ短くしましょう。
時刻はぴったりよりも「ごろ」で
ホワイトボードで大事なのは、正確さよりも安心してもらえる書き方です。「15時30分 訪問看護」と細かく書くと、時間どおりに来ないだけで心配になってしまうことがあります。「3時ごろ 看護師さんが来ます」のように少し幅を持たせると、混乱を招きにくくなります。
道具に頼っても苦しいときは
ホワイトボードは手軽で役に立つ工夫ですが、すべての困りごとが解決するわけではありません。以下のような場面が目立ってきたら、家族の力だけで乗り切ろうとしないことが大切です。
- 夜中に起こされて対応する回数が増えてきた
- 同じ説明を繰り返すこと自体がつらく感じる
- 介護のために自分の仕事や生活が立ち行かなくなってきた
こうしたときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、介護サービスの利用を増やすことや、施設での生活を含めた選択肢を検討してみてください。介護の現場でも、文字や掲示を使って情報を伝える工夫が取り入れられていることがあります。一人で頑張り続けない道を知っておくことも、親を大切にする方法の一つです。
まとめ 書いて伝える工夫で、やりとりにゆとりを
認知症の親が同じことを何度も聞くのは、忘れてしまうことへの不安の表れでもあります。ホワイトボードに予定や答えを書いておけば、親は自分で確かめられ、家族は叱らずに返事ができるようになります。
書く内容は少なめに、文字は大きく、時刻は「ごろ」と幅を持たせて。完璧を目指さず、できるところから取り入れてみてください。小さな工夫の積み重ねが、親子の穏やかな時間を守ってくれるはずです。