介護がつらいときに役立つ「ダメ三原則」とは?言い換えのコツも紹介
毎日の介護の中で、思わず強い口調になってしまったり、あとから「言いすぎてしまった」と落ち込んだりすることはありませんか。同じ質問を何度も繰り返されたり、こちらの思いがうまく伝わらなかったりすると、どれほど大切に思っている相手でも、心の余裕は少しずつすり減っていきます。
そんなときに覚えておきたいのが、介護の現場で大切にされている「ダメ三原則」という考え方です。特別な技術ではなく、声のかけ方や向き合い方を少し変えるための心がけで、介護される人だけでなく、介護する人の気持ちを軽くすることにもつながります。
この記事では、ダメ三原則の意味と日常での取り入れ方、そして介護を長く続けるために欠かせない自分自身のケアについて紹介します。
イライラしてしまうのは、真剣に向き合っているから
介護がつらいと感じるのは、あなたの優しさが足りないからではありません。相手のためを思って一生懸命になるほど、思いどおりにいかない場面にぶつかり、気持ちが張りつめてしまうものです。
特に家族の場合は、元気だったころの姿をよく知っているぶん、「どうしてできないの」という思いが湧きやすくなります。まずは、イライラする自分を責めすぎないことが出発点です。そのうえで、関わり方を少し工夫するための道しるべとして、ダメ三原則を役立ててみてください。
ダメ三原則は「怒らない・否定しない・命令しない」
ダメ三原則とは、介護の場面でのコミュニケーションの基本として知られる三つの心がけのことです。
- 怒らない
- 否定しない
- 命令しない
どれも当たり前に思えますが、毎日のこととなると意外に難しいものです。この三つを意識するだけで、相手の自尊心を傷つけにくくなり、お互いに穏やかな時間を過ごしやすくなります。
大切なのは、三つすべてを完璧に守ろうとしないことです。家族ががんばるための決まりごとではなく、相手の気持ちを受け止めるための合言葉くらいに考えましょう。まずはどれか一つ、取り組みやすそうなものから始めれば十分です。
場面ごとに考える三原則の使い方
怒りが込み上げてきたとき
感情をそのままぶつけてしまうと、相手は責められたと感じて身構えてしまいます。そうなると、本当に伝えたいことはかえって届きにくくなります。
カッとなりそうなときは、ひと呼吸おいてから、責める言葉ではなく「今どうすればよいか」だけを短く伝えてみましょう。
- 避けたい言い方:「何回言ったらわかるの」
- 言い換えの例:「朝のお薬はこの袋だよ。一緒に飲もうか」
どうしても気持ちがおさまらないときは、「ちょっとお茶をいれてくるね」などと声をかけ、いったんその場を離れるのも一つの方法です。少し距離を置くだけで、気持ちを立て直しやすくなります。
不安や不満を打ち明けられたとき
「誰もわかってくれない」「みんな私を邪魔にしている」などと言われると、つい「そんなことないよ」と打ち消したくなります。けれども、気持ちを否定されると、相手はそれ以上話してくれなくなるかもしれません。
たとえ事実と違っていても、まずは「そう感じている」という気持ちそのものを受け止めることが大切です。
- 受け止める言葉の例:「そんなふうに思っていたんだね」「心細かったよね」
気持ちが落ち着いてくると、本人が本当に困っていることが見えてくる場合もあります。どうすればよいかを一緒に考えるのは、その後でも遅くありません。
何かをしてほしいとき
「早く着替えて」「お風呂に入って」といった指示の言葉は、時間に追われているときほど出やすいものです。しかし、命令されるような言い方が続くと、本人の自立心や意欲がそがれてしまうことがあります。
そこで、相手が自分で決められるように、小さな選択肢を用意してみましょう。
- 「お茶とコーヒー、どちらにしましょうか」
- 「先にお風呂にする?それとも少し休んでからにする?」
- 「上着は青と茶色、どっちを着ていこうか」
自分で選べたという感覚は、本人の誇りや毎日の満足感を支えることにつながります。
うまくいかない日があってもかまわない
ダメ三原則を知っていても、疲れている日や忙しい日には、思わずきつい言い方をしてしまうこともあるでしょう。そんな自分に気づけただけでも、十分な一歩です。
はじめは言い換えがぎこちなく感じられても、繰り返すうちに少しずつ口になじんでいきます。うまくいかなかった日は「次はこう言ってみよう」と振り返るくらいの気持ちで、長い目で取り組んでいきましょう。
介護する自分自身もいたわって
三原則は相手を思いやるための考え方ですが、介護する人の心と体に余裕がなければ、続けることはできません。自分を大切にする時間も、介護の大事な一部です。
- 深呼吸や軽いストレッチなど、短い休憩をこまめにはさむ
- 友人や家族と、介護以外の話をする時間を持つ
- 寝る前のスマートフォンを控えるなどして、睡眠を優先する
- 困りごとは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する
それでも負担が大きいと感じるときは、介護サービスを積極的に使うことも考えてみてください。自宅に来てもらう訪問介護や、日帰りで通うデイサービス、短期間泊まれるショートステイといったサービスを組み合わせれば、介護する人が休む時間をつくることができます。
サービスに頼ることを、後ろめたく感じる必要はありません。誰かの手を借りるのは、相手にも自分にも笑顔でいられる時間を増やすための前向きな選択です。
まとめ 完璧を目指さず、小さな言い換えから
怒らない、否定しない、命令しない。この三つの心がけからなるダメ三原則は、介護の中で起こりがちなすれ違いをやわらげ、相手の尊厳を守るための心がけです。すべてを一度に実践しようとせず、できそうなことを一つずつ試していけば大丈夫です。
そして何より大切なのは、介護をしているあなた自身を守ることです。つらさを感じたら一人で抱え込まず、身近な家族や専門職、介護サービスの力を借りながら、無理のないペースで続けていきましょう。