認知症ケアは「できない」と決めず一緒に進める関わり方
これまで当たり前にこなしていたことが、少しずつ難しくなっていく。認知症のご家族を支えていると、そんな変化に戸惑う場面が増えていきます。
「もう何もできないのかもしれない」と感じてしまうのは、自然な反応です。けれども、見方を少し変えるだけで、日々の介護が楽になることがあります。
この記事では、本人の力を生かしながら関わる「一緒にやる」という考え方と、介護する側の心の持ち方についてお伝えします。
「もうできない」と感じてしまう場面
認知症の介護では、次のような変化が見られることがあります。
- 服をうまく着られなくなる
- 物事の段取りが分からなくなる
- 同じ質問を何度も繰り返す
そのたびに「この先どうなるのだろう」と不安になる方も多いでしょう。気持ちが沈むのは、ご家族が真剣に向き合っているからこそです。
先回りして代わりにやることの落とし穴
できないからと、ご家族がすべて引き受ける対応は、一見やさしさに見えます。ただ、認知症の方にとっては次のような受け止めにつながる場合があります。
- 自分でやろうとした気持ちを止められたように感じる
- 家庭での役割を失った感覚になる
- 失敗することへの不安が強まる
「できない」と決めつけることは、本人だけでなく介護する側の気持ちも重くしてしまうことがあります。
「一緒にやる」という中間の選択肢
すべてを任せるのでも、すべてを代わるのでもなく、その間にある関わり方が「一緒にやる」ことです。たとえば、次のような方法があります。
- 隣に並んで、動作の見本を見せる
- 最初のひと手間だけ手を貸す
- 声をかけながら、次の動作へ促す
本人が持っている力を引き出しながら進めるため、「やらされている」ではなく「自分でやっている」という感覚を保ちやすくなります。
小さな「できた」が自信につながる
時間がかかっても、途中で手が止まっても構いません。次のような場面も、立派な「できた」です。
- ボタンを一つ留められた
- 食器を一枚運べた
- 声かけで次の動作に移れた
認知症の方は、うまくできているかどうかを、周りの人の表情や声の調子から感じ取っているといわれています。「できたね」「助かったよ」という一言が、次への意欲を後押しします。
介護する側も完璧を目指さなくていい
忙しくて待っていられない日や、つい手が先に出てしまう日があっても、責めなくて大丈夫です。介護は毎日が同じ条件とは限りません。その日の体調や気分、家の状況しだいで対応が揺れるのは、ごく自然なことです。
余裕のある日に、できる範囲で試す。それくらいの気持ちで十分です。
悩みを抱え込まず、相談してみましょう
「一緒にやる」関わり方は大切ですが、続けるにはエネルギーが必要です。次のような不安が出てくるのも、自然な流れといえます。
- この関わり方で合っているのだろうか
- この先、どこまで自宅で見ていけるのだろうか
- 施設を考えるのはいつ頃からがよいのだろうか
人それぞれの状態や性格によって、ふさわしい環境や支援は変わってきます。担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口では、今の状況に合ったサービスや将来の選択肢について相談できます。症状や対応で気になることがあれば、かかりつけ医にも伝えておくと安心です。
少し先のことを知っておくだけでも、気持ちに余裕が生まれ、介護を続けるための大切な準備になります。
まとめ 力を残しながら支える
「できない」と見切るのではなく、「一緒にやる」という選択肢を持つこと。それは、認知症の方の力を守り、介護するご自身の心を守ることにもつながります。完璧を求めず、周囲の支援も借りながら、無理のない形で続けていきましょう。