認知症の親の一人暮らし、続けて大丈夫?家族が知っておきたい危険と備え
認知症と診断された親が、今も一人で暮らしている。本人は「自分のことは自分でできる」「この家を離れるつもりはない」と言っていて、家族としてはその気持ちを大切にしたい。けれど、本当にこのままで大丈夫なのだろうか――。そんな迷いを抱えているご家族は多いのではないでしょうか。
住み慣れた家での暮らしは、本人にとってかけがえのないものです。その一方で、認知症の症状が進むにつれて、思いがけない事故やトラブルに巻き込まれる心配も大きくなっていきます。
この記事では、認知症のある親が一人暮らしを続けるときに家族が知っておきたい危険と、早めに気づきたいサイン、暮らしを支えるための備えについて整理します。
「今できている」と「この先も安全」は分けて考える
認知症と一口にいっても、症状の表れ方や程度は人によって大きく異なります。早い段階であれば、買い物や食事の用意、掃除などを自分でこなしている方も珍しくありません。
ただ、多くの認知症は時間をかけて少しずつ進んでいきます。今は問題なく暮らせていても、半年後、一年後には状況が変わっている可能性があります。「今のところ困っていないから大丈夫」と判断するだけでなく、これから起こりうることを家族で想定しておくことが大切です。
家の中で起こりやすい危険
火の消し忘れ
一人暮らしの認知症の人について、家族がとりわけ心配するのが火の扱いです。鍋をコンロにかけたまま忘れてしまう、ガスの火を消し忘れる、暖房器具をつけたまま出かける、たばこの火の始末が不十分になる、といったことが起こりえます。
本人は「きちんと消した」と思っていても、その記憶自体があいまいになっていることがあります。火災につながると本人だけでなく近隣にも影響が及ぶため、早めの対策を考えたいところです。たとえば、ガスコンロをIHに替える、自動で火が消える機能のついた機器を選ぶ、見守りサービスを取り入れるといった方法があります。
薬の飲み忘れ・重複
認知症が進むと、決められたとおりに薬を飲むことが難しくなっていきます。飲んだことを忘れてもう一度飲んでしまう、飲み忘れが何日も続く、別の薬と取り違えるといったことも起こります。高血圧や糖尿病などの持病がある場合は、体調の悪化につながりかねません。
日付ごとに薬をセットしておけるお薬カレンダーを使う、訪問看護などのサービスを利用するといった方法を、かかりつけ医やケアマネジャーと相談してみましょう。
食事や水分の不足
食事をとったかどうかを忘れたり、食べること自体を忘れてしまったりすることもあります。冷蔵庫がほとんど空になっている、同じものばかり食べているといった状態が続くと、栄養が足りなくなったり、水分不足から脱水を起こしたりするおそれがあります。体重が減って体力が落ちると、転倒や入院のきっかけにもなりかねません。
家の外や人との関わりで起こりやすい危険
道に迷って帰れなくなる
症状が進むと、通い慣れた道でも帰り方がわからなくなることがあります。近所へ買い物に出たつもりが、気づけば遠くまで歩いてしまい、家に戻れなくなるというケースもみられます。真夏や真冬の屋外では、命に関わる事態になることもあります。認知症の人が行方不明になる事例は、警察への届け出だけでも毎年少なくないとされています。
詐欺や悪質な勧誘
判断する力が弱まってくると、詐欺や強引な訪問販売の標的になりやすくなります。必要のない高額な商品を契約してしまう、「屋根が傷んでいる」などと言われて工事を頼んでしまう、電話で言われるままにお金を振り込んでしまう、見知らぬ人を家に招き入れてしまう、といった被害が心配されます。一人暮らしでは周りに相談する相手がいないため、特に気をつけたい点です。
人と話す機会が減る
一人で暮らしていると、どうしても会話の機会が少なくなります。社会とのつながりが薄れることで、認知機能の低下が進んだり、気分が落ち込みやすくなったりすることもあるといわれています。デイサービスや地域の集まりなど、人と関わる場を暮らしの中に持つことも大切です。
家族が見逃したくないサイン
電話や帰省の際に、次のような変化がないか気にかけてみてください。
- 冷蔵庫に同じ食品がいくつも入っている
- 郵便物が開封されずにたまっている
- 部屋が以前より散らかっている
- 支払いの遅れなど、お金の管理に乱れがある
- 同じ話を何度もくり返す
- 薬がきちんと飲めていない
- 家の近くで帰り道がわからなくなったことがある
こうした様子が増えてきたら、一人暮らしをこの先どう支えていくか、家族で話し合う時期に来ているのかもしれません。
一人暮らしを支える工夫と、住み替えという選択肢
認知症になったからといって、必ずしも施設に移らなければならないわけではありません。訪問介護やデイサービス、見守りサービスなどを組み合わせながら、自宅での暮らしを続けている方もいます。まずはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、今の状態に合った支え方を考えてみましょう。
それでも危険が大きくなってきたときは、老人ホームなどへの住み替えも検討の対象になります。認知症の人の受け入れやケアに力を入れている施設であれば、スタッフの見守りや生活の支援を受けながら、落ち着いて暮らせる環境を得られる可能性があります。
「まだ早い」と感じる段階から少しずつ情報を集めておくと、いざというときに慌てずに判断できます。本人の希望を聞きながら、家族で選択肢を整理しておきましょう。
まとめ:本人の思いを大切にしながら、安全も見守って
認知症のある親の一人暮らしには、火の不始末、薬の管理、食事や水分の不足、道に迷うこと、詐欺の被害、孤立といった、さまざまな危険がともないます。大切なのは「今できているかどうか」だけでなく、「この先も安全に続けられるか」という視点を持つことです。
本人の気持ちを尊重しつつ、家族だけで抱え込まずに、かかりつけ医やケアマネジャー、地域包括支援センターなどの力を借りながら、無理のない支え方を探していきましょう。