認知症の方への接し方|プライドを傷つけない言葉がけのコツ

介護をしていると、何度も同じ話を繰り返されたり、簡単なことができなくなっていたりする場面に出会い、思わず強い口調になってしまうことがあります。あとになって「言い過ぎたかもしれない」と感じた経験を持つ方は少なくありません。

認知症になると記憶や判断の力には変化が起こりますが、本人の人格やこれまで積み重ねてきたプライドがなくなるわけではありません。反対に、できないことが増えてくるほど、自分らしくいたいという思いが強まる場合もあると考えられています。

ここでは、認知症の方の自尊心を大切にしながら関わるための考え方と、日々の声かけで意識したいポイントを紹介します。

感情の記憶は長く残りやすい

認知症が進むと、出来事そのものを覚えていられなくなることがあります。一方で、そのときに感じた「嬉しかった」「悲しかった」「腹が立った」といった感情面は、比較的長く残りやすいといわれています。

そのため、きつい言い方をされた、子ども扱いされたと感じた記憶は、具体的な出来事を覚えていなくても、本人の中に不快な気持ちとして残ってしまうことがあります。接し方次第で、不安や怒りにつながりやすくなる点には注意が必要です。

自尊心を大切にする関わり方

まずは言い分を受け止める

話の内容が事実と違っていたり、少し前に聞いたことの繰り返しだったりすると、つい訂正したくなるものです。しかし頭ごなしに否定すると、本人は責められたと感じやすくなります。「そうなんですね」「そう思われたんですね」と、いったん気持ちを受け止める言葉を挟むだけでも、相手の安心感は変わってきます。

対等な大人として言葉を選ぶ

優しく接しようとして「すごいね」「よくできたね」といった褒め方をすることがありますが、人によっては子ども扱いされたように感じる場合があります。代わりに、感謝の気持ちを素直に伝える言い方を選ぶと、対等な相手として向き合っていることが伝わり、自然な関係を保ちやすくなります。

「まだできること」に目を向ける

認知症があると、できなくなったことばかりに意識が向きがちです。けれども、食事の準備を少し手伝う、洗濯物をたたむ、植物の世話をするなど、まだ担える役割は残っています。役割を持ち続けることは、本人が自分の存在価値を感じるきっかけにもなります。

注意するときは人目を避ける

家族や他人の前で指摘されると、強く自尊心が傷つくことがあります。どうしても伝えなければならないことがあるときは、できるだけ二人きりの場面で、さりげなく話すようにすると、相手の負担を減らせます。

介護する家族も自分を責めすぎない

毎日穏やかに接し続けることは、簡単なことではありません。疲れからつい強い言葉が出てしまったり、イライラしてしまったりする日もあるでしょう。それでも、相手の気持ちを尊重したいと考えている、その思いだけで十分に価値があります。うまくいかない日があっても、自分を過度に責める必要はありません。

家族だけで抱えこまないために

認知症の介護は、家族だけで続けようとすると負担が積み重なりやすくなります。日々の関わり方に迷ったときは、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すると、具体的な対応のヒントが得られることもあります。

また、生活のサポートが必要になってきた場合は、認知症のケアに慣れたスタッフがいる施設を選択肢として検討する家族もいます。環境を見直すことは、本人の尊厳を守る関わりを続けていくための一つの方法でもあります。

まとめ 小さな言葉の積み重ねが尊厳を守る

認知症になっても、本人の感情や自尊心は長く保たれると考えられています。否定せずに受け止める、対等な大人として接する、できることを大切にする、人前で指摘しないといった小さな工夫の積み重ねが、本人の安心につながります。

同時に、介護をする側が無理を重ねすぎないことも大切です。うまくいかない日があってもよいと考えながら、必要に応じて周囲の力も借りつつ、本人の気持ちに寄り添う関わりを続けていきましょう。