認知症の方に音楽を取り入れる良さと曲の選び方
認知症のご家族に、日々の楽しみを用意してあげたい。自宅でできる工夫を探していると、音楽という選択肢が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
音楽の良いところは、道具も準備もほとんど要らないことです。耳を傾けるだけでなく、声を合わせたり、リズムに乗って手を叩いたり、曲にまつわる思い出を語り合ったりと、楽しみ方が広がります。
ここでは、認知症の方の生活に音楽を取り入れる良さと、曲を選ぶときの視点、気をつけたい点を順に整理します。
音楽が注目される理由
認知症の方を対象にした音楽の取り組みは、さまざまな場面で研究されています。気持ちの安定や生活の質、日常の行動面などによい変化が期待できるとする報告もあります。
特に、長年親しんできた曲や記憶に結びついた旋律は、会話の糸口になりやすいといわれています。話すことが難しくなってきた方でも、音楽には反応を示す場合があります。
生活に取り入れる利点
- 気持ちを切り替えるきっかけになる
- 家族との会話が生まれやすくなる
- 過去の思い出が語られやすくなる
- 歌や手拍子を一緒に楽しめる
- 毎日の暮らしに楽しみを足しやすい
ただし、感じ方には個人差があります。音楽が認知症そのものを治したり、認知機能の向上を保証したりするものではありません。穏やかに過ごすための手段の一つ、という位置づけで取り入れましょう。
曲を選ぶ三つの視点
青春時代によく聴いた曲
最初に試したいのは、若かった頃に身近だった音楽です。流行歌や童謡、民謡など、耳にして懐かしさがこみ上げるような曲を探してみてください。
本人のお気に入りだった曲
口ずさんでいた歌や、好きな歌手の曲など、ご本人の好みを最優先にしましょう。家族が喜びそうだと思った曲を流してみて、顔つきや仕草を観察しながら絞り込んでいく進め方もあります。
声を合わせて歌える曲
耳を傾けるのに加えて、ともに歌ったり手拍子を添えたりすれば、同じ時間を分かち合えます。歌詞を覚えている曲なら、自然に口が動き出すこともあるでしょう。
押しつけにならないように
「認知症によさそうだから」という理由で、望んでいない音楽を流し続けるのは避けましょう。音が大きすぎる、好みに合わないといった状況では、かえって不快感を与えてしまうおそれがあります。
様子を見ながら、無理のない音量と長さにとどめてください。乗り気でない日は、そっと止めて構いません。
曲目よりも、共に過ごす時間
一緒に歌う、思い出話に花を咲かせる、音楽を流しながらのんびり過ごす。そうしたひとときそのものが、高齢の方にとって大切な楽しみとなることがあります。何を選ぶかにとらわれすぎず、穏やかな雰囲気を味わうことを重視してみてください。
よくある質問
音楽を聴けば認知症は良くなりますか
良くなるとは言い切れません。気分や生活の質によい影響が及ぶ可能性は期待されていますが、現れ方には個人差があります。
どんな曲から始めればよいですか
若い頃に耳にしていた曲や、好きだった曲からで十分です。本人が懐かしさや心地よさを感じているかどうか、反応を見ながら調整していきましょう。
在宅での介護に不安が出てきたら
音楽を取り入れても、自宅での介護が難しくなってきたと感じる時期が来るかもしれません。その際は、ケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の介護保険窓口に相談してみましょう。認知症への対応やレクリエーション、日中の過ごし方は施設によって違いがあるため、本人に合う暮らし方を一緒に探してもらえます。症状に関して心配なことは、かかりつけ医にも伝えておくと安心です。
まとめ 音楽をその人らしいひとときに
認知症になっても、好きな曲や心に残る思い出が失われるわけではありません。まずは家族で「どんな歌が好きだった?」と尋ねるところから始めてみませんか。音楽を通じて、ご本人が大事にしてきた気持ちに触れ直せるかもしれません。
なお、この記事は一般的な情報をまとめたもので、病気の診断や治療の代わりになるものではありません。